『乳児のモバイル使用、言葉の発達遅れるリスクも 学会で発表』2017年5月5日子どもの日のYahoo!ニュースにこのような記事が掲載されました。「スマホは子どもに悪影響がありますよ」と以前から言われていましたが、今回の調査結果でそれが一部科学的に裏付けされた形になりました。
【このページの目次】
Yahoo!ニュースの内容
カナダのトロント大学の研究チームが発表した調査結果で、「生後6ヶ月から2歳までの乳幼児は、スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機などで遊ぶ時間が長いほど言葉の発達が遅れる可能性が大きくなる」という内容です。
これは乳幼児900人の保護者に聞き取り調査をして、生後18ヶ月の時点でのスマホなどの使用時間と言葉の発達を比較した研究で、一日あたりのスマホなどの使用時間が30分長くなるごとに、音声や発話などの言葉の発達が49%増えることが分かったそうです。今までにも散々「危険だ」と言われてきた内容が、ついに科学的に証明されてしまったことになります。
乳幼児のスマホ 5つの危険
端的に言えば、乳幼児にスマホを使わせることは赤ちゃんのすべての機能面で悪影響が出ると考えられます。乳幼児がスマホを使う危険性は次の5つです。
- 言葉の発達が遅れる
- 体の発達が遅れる
- 心の発達が遅れる
- スマホ中毒になる
- 電磁波の影響
①言葉の発達が遅れる
赤ちゃんは「10000語聞いたら話し始める」と言われることがあります。1万語ではなく「1万時間聞いたら話しはじめる」と言われることもあります。英語のスピークング力と同じように、それが母国語でも人がしゃべれるようになるには言葉をたくさん聞く必要があります。
しかしスマホを使っている赤ちゃんはスマホを使っている分だけ人と接する時間が少なくなっていますから、ママやパパの日本語も十分には聞けていません。そのため言葉の発達が遅れることになってしまいます。
電子端末のブルーライトや電磁波が脳に影響を与えるとも言われていますが科学的な根拠はまだ示されていません。
②体の発達が遅れる
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体の発育が遅れる
赤ちゃんの動作にはすべて意味があります。生後1ヶ月くらいですでに目でものを追い、生後3ヶ月くらいで首でものを追えるようになることも、生後半年くらいで寝返りをすることも、生後9ヶ月くらいでハイハイをすることも、生後1年くらいで一人立ちができるようになることも、1歳半くらいでよちよち歩きができるようになることもすべて赤ちゃんの体の発達に必要な訓練です。
床から上へ上へと順番に、その時期にその動きを十分にしておくことが次の動きへの大切な練習になっています。一昔前に「ハイハイをせずに立てるようになってしまった子はよく転ぶ」という問題が注目され、ハイハイの重要性を見直された育児書がたくさん出版されたこともありました。
スマホを使っている時間赤ちゃんはじっとしていることになりますから「必要な運動ができていない」状態になってしまい、体の発達が遅れたり、上手に体のバランスを取ることができなくなります。
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姿勢が悪くなる
スマホを使う時には猫背になってしまいがちですよね。赤ちゃんももちろん猫背になります。ふつうなら「長い時間座ったままでいる」ということはない赤ちゃんですが、スマホという格好のおもちゃを使っていると下を向いて猫背のままいつまででも座っています。すると猫背の姿勢しか知らないまま大きくなります。小学校に入ると正しい姿勢を教わりますが、赤ちゃんのときからずっと猫背でいた子はすでに猫背がクセになっていますから、教わったからと言って正しい姿勢がすぐにできるわけではありません。正しい姿勢は心地悪く、なかなか勉強に集中できません。また親からも先生からも猫背を注意されつづけると勉強嫌いになってしまう可能性もあります。
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目が悪くなる
近年ブルーライトの危険性について議論されることが多くなっていますが、テレビやスマホを見ることと赤ちゃんの視力低下はまだ科学的な根拠が見つかっていません。
しかしテレビよりスマホの方が目に悪影響を与えることは確かです。スマホは手で持っているため画面が常に揺れているからです。揺れている画面をずっと見ていると気持ちが悪くなることもあると思いますが、赤ちゃんにだって当然起こります。
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食欲がなくなる
一日7時間集中してパソコンの画面を見続けなくてはいけない会社に就職した新入社員がパソコンの使いすぎで頭痛や吐き気を訴えることがあります。赤ちゃんが頭痛や吐き気を感じれば、食欲がなくなったり、寝付きが悪くなったり、ぐずり泣きが多く長くなったりします。
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睡眠が浅くなる
日中の落ち着きのなさは夜の眠りの質にも影響します。赤ちゃんの脳は日中にうけた刺激を寝ている間に思い返していると言われていますから、体調の悪さも思い返しているのかもしれません。
③心の発達が遅れる
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情緒の発達の遅れ
いつもスマホばかりで遊んでいる子は感性がにぶくなってしまうことがあります。感性というのは「ありのままに感じる心」です。花が咲いていることに「気づき」、咲いた花をキレイだなと「感じる」心のことです。感性は大人になれば衰えます。感性が豊かな乳幼児期にふさわしい体験をしていないと、大人になって画面の中のものにしか興味をもてないようになる危険性があります。
また言葉の発達も関係しています。いつもスマホばかりで遊んでいる子は、人から話しかけられた時にどのように反応していいのか学べません。なので「こんにちは」と言われても返事をできないし、「何してるの?」と聞かれても答えることができません。「それ、かわいいね」「それ、美味しい?」などという質問にも答えられず「あら?この子、感情はあるのかしら?」と思われてしまうことになります。
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親子関係のゆがみ
ママやパパとの毎日のおしゃべりは赤ちゃんの言葉の発達だけを促しているわけではありません。ママとパパとの温かいやさしい時間は赤ちゃんの心も育てています。
赤ちゃんの心の発達の第一歩はママやパパとの絆を感じることです。ボンディングと呼ばれる正しい親子関係の基礎を築けていないと、赤ちゃんはずっと何かに緊張していなくてはいけません。そのため、夜泣きがひどかったり、聞き分けがよくなかったり、いわゆる『育てにくい子』になってしまいます。
乳幼児期につちかうボンディングは魔の2歳期やイヤイヤ期だけでなく、思春期や成人後の親子関係まで強く影響すると言われています。
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『ワガママな子』に
『ワガママな子』になるというのは「スマホをするとワガママになる」という意味ではありません。親子のコミュニケーションが十分でないと、子どもは親の言葉をきちんと聞けなくなってしまいます。そのため親子の会話が少なくなると、結果として『ワガママな子』になってしまうということです。
危ないことをしているとき、周囲に過剰な迷惑をかけているとき、親として叱らなければいけない瞬間があります。親が「やめてちょうだい」「しないでちょうだい」と言えばやめてくれる子もいれば、親が「やめなさい」「何度言ったら分かるの」と怒鳴ってもやめない子もいます。そして、日頃から親と一緒に遊んたり絵本を読んたりしている子は聞き分けがよくなる傾向にあります。
人は、接触回数が多ければ多いほど、その人に心を許します。ママとパパは「唯一無二の大好きなママとパパ」なので比べることなんてできませんが、同じ大好きなママでも、いつも一緒に遊んでいるママの「やめてちょうだい」のお願いの方が、いつもはスマホで時々しかおしゃべりしないママの「やめてちょうだい」よりも、子どもの心に届くのは想像に難くありません。
「やめてちょうだい」「静かにしてちょうだい」などという親の言葉が子どもに届かないと「聞き分け」が悪いことになり、結果として『ワガママな子』『育てにくい子』と見られてしまいます。
④スマホ中毒になる
スマホ中毒の問題は少々深刻です。親のスマホ中毒が問題視されていますが、赤ちゃんだってスマホ中毒になりえます。時々「抱っこしてもミルクをあげても泣きやまない!どうしよう」という時に毎回スマホを与えてしまうというママがいますが、もしかすると寝られずに泣いているのではなくスマホを触りたくて泣いているのかもしれません。スマホの画面の光がなくては寝られなくなってしまってはスマホ中毒と言わざると得ません。
乳幼児期にスマホ中毒になってしまっては、学齢期にスマホを取り上げて勉強させるのは至難の業です。上手に使えばスマホやタブレットは学習には有用ですが、使わないと機嫌が悪くなるほどハマってしまっては本末転倒です。
⑤電磁波の影響
最後は電磁波の問題です。かつてマーキュリー夫人が放射能を研究しながら放射能の危険について直感していたように、パソコンやスマホの開発者も電磁波の危険性を直感しているようです。Apple社の創始者スティーブ•ジョブズは電子端末の悪影響を心配して4人の子どもにはパソコンや携帯の使用を厳しく制限していたと言います。
健康と電磁波の関係についてはまだ科学的には証明されていませんが、かかりつけの医師や医師である友人などは「必要のないときには体に近づけないようにしている」と口を揃えますので、スマホの電磁波には何らかの危険が潜む根拠があるのでしょう。予防注射や下の子の妊娠などで小児科医や産婦人科医に会う機会があれば是非聞いてみてください。
医者にアドバイスを求める時には『先生ご自身の経験を教えてください』というスタンスで聞くのがコツです。医者はふつう医学会の見解しか教えてくれません。「スマホの電磁波は健康に害がありますか?」と質問しても、おそらくは「根拠は見つかっていません」という返事が返ってくるだけでしょう。しかし「先生はお子さんに何歳の時から何時間くらいスマホを使わせていましたか?」などと体験談を聞くと、医者の本音も少しだけ垣間見ることができることがあります。自分の子どもの話になると医者の立場から親の立場へと、少し気が緩むのでしょうか。
本当の危険性はまだ不明
「スマホは体に悪い」と言われるようになって何年も経ちますが、統計では乳幼児にスマホを与える親は増えつづけています。ブルーライトも電磁波も科学的な根拠はまだ何もありませんし、乳幼児がスマホを使ってもすぐに体調を崩したり、病気になったりするわけではないので仕方のないことかもしれません。
しかし、例えばもしかしたらスマホの使用時間が鬱やガンや不妊の発生率に関係しているかもしれません。今、鬱にかかっている人がもしかしたら子どもの時から携帯をいじってばかりいたのかもしれません。今、不妊治療を頑張っている人がもしかしたら学生時代にPHSや携帯をジーンズのポケットに入れっぱなしにしていたのかもしれません。過去に戻って誰が何歳から何時間、携帯に触れていたのか調査することはできませんから因果関係は誰にも分かりませんが、逆に、関係ないと言い切ることもできません。
スマホと子どもの発達やスマホと健康被害の科学的な根拠はまだ解明されていません。おそらく今回のカナダの研究チームのように、世界中の研究者たちがスマホの影響に注目し、今も研究を続けていることでしょう。しかし調査した赤ちゃんが大きくなってからしか結果は分かりませんから、子どもの発達や成長に関する研究というのは時間がかかります。(今回のカナダの調査はたった生後18ヶ月までの間のことだけでした)
原因が分からないから「別にいいや」ではなく、原因が分からないからこそ「少しでも体にいいことを」してあげましょう。とりあえず今日から、スマホを使っていい時間と場所と条件を『家族の約束事』として子どもたちと一緒に考えてみませんか。
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