2019年の青少年読書感想文全国コンクール小学生中学年の部。4冊の課題図書の賞がとりやすい本をご紹介。
2019年課題図書のおすすめは
学校代表に選ばれ、入賞を勝ち取るにはよい読書感想文でなくてはいけません。
良質な感想が出る本はコレ
『かみさまにあいたい』
大好きなおばあちゃんにうそをついたまま、永遠の別れをむかえてしまった雄一。ひょんなことから、同級生の竜也といっしょに、「神さま」との交信を試みることになるが…。心の傷を抱えた少年たちのひみつの友情と成長の物語。
この本のテーマは「友情」「神さま」。神さまにお願いをしたいという気持ちをきっかけにして、雄一と竜也の友情が少しずつ深まっていく物語です。183ページという長めのお話で、時間をかければ次々に「感想文にふさわしい」場面や感想が見つかり、時間をかけるほど良い読書感想文が書けます。
それぞれの場面で、雄一と竜也の気持ちになって考えてみたり、二人の違いを比べてみたり、自分が神さまにお願いするとしたらどんなことをお願いしたいかを考えてみたり、雄一のような後悔を自分がしたことがあるかを考えてみたり、雄一と竜也の周りの大人やクラスメイトとのやりとりについて深く考えてみたり、感想文のヒントは本のいたるところに隠れています。
賞を狙いしっかり書くときは
本当に賞がもらえた! と話題の『読書感想文書き方ドリル』の著者である大竹氏は、2019年の課題図書の中ではこの本が「最良の感想文になる本」として挙げています。
『読書感想文書き方ドリル』の感想文テクニックは「6つの質問(詳細後述)」です。「6つの質問」に沿って、一つずつ丁寧に読み込んでいく作業が楽しめる作品だと思います。
この本は考える時間に比例して感想文が良くなるタイプの課題図書です。読むのにも時間がかかりますし、感想をまとめるのにも時間がかかります。夏休みに遊びすぎてしまて時間がなくなった! という場合にはおすすめできません。
すぐに書ける簡単な本はコレ
183ページの『かみさまにあいたい』とは反対に、すぐに読めて、すぐに感想がかけるのがこちらの本です。41ページしかありません。
『季節のごちそうハチごはん』
岐阜県などのある地域では、ハチの子を食べる習慣があります。おどろくかもしれませんが、むかしから、世界中で虫は食べられてきました。日本でも、季節のごちそうとして虫を食べているのです。いったい、どんなふうに食べているのでしょうか。
この本のテーマは「食文化」「虫」です。
なぜハチを食べる食文化について調査したドキュメンタリー絵本です。41ページしかない上に、写真が多く文字は少なめなので「本を読む」ための時間はほとんどいりません。
時間があるようでしたら、ネットでハチを注文してみることをオススメします。届いて箱を開けてみたときの気持ち(気持ち悪かった、思っていたよりも平気だったなど)や、家族で食べようとしたときのエピソード(誰が最初に食べてみるかで揉めた、結局誰も食べることはできなかったなど)、食べることができればその味について(思っていたよりも美味しかった、ハチの足が口の中にささって痛かった、桜エビみたいな味だったなど)などに字数をつかって、詳細な食レポを書いてみましょう。買ったけど結局食べられなかったでも十分に魅力的な感想文になります。それに、わざわざ買ってみる人は少ないでしょうから、このような体験談を書くことができれば賞をとれる可能性は格段に上がります。
買うのであれば「食べ比べセット」がおすすめです。「蜂の子」の他にも、これからご紹介します「いなご佃煮」「サナギ佃煮」などが食べ比べできるセットもあります。食べ比べですから、他の商品に比べて量が少ないのも嬉しいです。発送までに時間がかかる場合がありますのでご注意ください。
この本であれば、次のような点を深く掘り下げたり、内容を混ぜたりして、感想文を書いてみてはいかがでしょうか。
「日本と世界の虫料理を調べる」
「日本と世界のゲテモノ食文化を比べる」
「虫が高タンパクで栄養価が高いことに着目し、同じく高タンパク食品を調べる」
「大好きな昆虫を食べることで、毎日命を食べていることを再認識する」
世界の虫料理はインターネットで「虫 料理 日本/世界」「ゲテモノ 料理 世界」などと検索するとたくさん出てきます。
虫料理であれば、イナゴやバッタ、コオロギなどを食べる食文化は世界各地にありますから、「どのような味なのか(皮ごと食べるエビに近いという人が多い)」「誰がどんなときに食べるのか(イナゴの大発生時に仕方なく食べたり、高い栄養価なので身分の高い人の食べ物であったり、お正月や結婚式などお祝い事で出されたり)」などを調べて、比較してみるのもよろしいかもしれません。
同じく虫料理でインパクトがあるのは、カンボジアの蜘蛛の唐揚げ(タランチュラのフライ)です。味は鶏の唐揚げに似ているという人が多いですが、かなり新しい食文化であるため、「ポルポト政権下の食糧難に仕方なく食べ始めた蜘蛛が意外な美味しさで、食糧難がおわってからも蜘蛛を食べることが習慣になり食文化として定着した」というエピソードも感想文に盛り込みやすいと思います。
ゲテモノ料理について書くのであれば、メキシコではアリの卵が珍味だとされていますし、お隣の韓国では屋台でカイコのサナギを食べることができます。アメリカのテキサス州の一部ではガラガラヘビを食べる文化があり、大きなフェスティバルも開催されていますし、オーストラリアの先住民族アボリジニには蛾の幼虫を食べる食文化があり、蛾の幼虫はクリーミーで濃厚な味らしく、今では先住民族以外のオーストラリア人(一部)にも人気があるといいます。
もう少し書きやすいゲテモノ料理であれば、フランスのエスカルゴ(かたつむり)などはフランス人でさえ「かたつむりを食べるなんて」とゲテモノ扱いをする人がいるほど好きな人もいれば好きでない人もいます。
食べなれた日本の食べ物も外国人にとってはゲテモノ料理であることがあります。馬刺し(馬を生で食べるなんて!!)、イカの活き造り(生きたまま食べるなんて!)、白子(魚の精巣)などを食べられる外国人は多くありません。
形がなまなましい食べ物としては、中国を含めた東アジアで食べられるニワトリの足や孵化する直前の卵なども有名です。ニワトリの足は三本の細い指にツメがついたままのニワトリの足だけが山盛りになっている屋台の光景は日本人には異様にうつりますし、それを取り分けている店員にも、美味しそうに食べ歩く現地の人たちにも「よく触れるなあ」と思ってしまうことでしょう。珍味とされるパロット(孵化する直前の卵)は卵の殻を半分だけ割り、すでに完全なヒナの姿をしている状態を見せた状態で、刺身の姿造りのようにその姿を楽しみながら食べる庶民の食べ物です。膝の痛みに効くらしく、現地ではお年寄りが路上などで食べている光景をよく目にします。魔女がヒヨコを丸呑みにしているようにも見えます。
刺身なら食べられる外国人も、例えば、日本の刺身の姿造りはなまなましくて凝視できる外国人はあまりいません。刺身の姿造りには目をそむけてしまう外国人も、国に帰れば頭がついたままのウサギをスーパーで物色し、自宅の台所では包丁で頭を切り落として料理を始めます(日本人の三枚おろしのように)。
このような世界の食文化についてまとめて、お子さんの率直な感想を書けば完成です。「人間は昔から身近で手に入るものを料理して食べてきた」「海外に行く機会があればその地域の食文化を尊重して、気持ち悪く感じる見た目の料理にも挑戦して見たいと思う」「珍しい食べ物だけが特別なのではなくて、いつも食べている牛肉や豚肉もウシやブタの命に違いない」もしかしたら「ぜんぶ食べてみたいと思いました」などという感想文になるかもしれません。
ペットを飼っている子はコレ
『子ぶたのトリュフ』
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
ジャスミンに命をすくわれた子ぶたのトリュフ。こんどはジャスミンを助けるために大かつやく!農場を舞台にした、少女と子ぶたの心あたたまる物語。
ペットを飼っているご家庭にはこちらがオススメです。毎日のペットとの交流をたくさん書くだけで、非常によい読書感想文に仕上がります。
賞がとりやすい本はコレ
体験談が得やすく「書きやすい」本というのは、他の子も体験談を「書きやすい」ためにライバルが多く、他の感想文と差をつけるためには文章の構成力と言葉の表現力が必要になります。
一方で、読書感想文が「書きやすい」わけではないけれど、「賞をとりやすい」本というのがあります。2019年の課題図書であれば『そうだったのか! しゅんかん図鑑』です。
大人が一読して「この本でいったい何を書いたらいいんだろう」と感じる本は、毎年、他の課題図書に比べると1.5~2倍もの感想文が入選しています。
例えば、2018年の課題図書である『すごいね! みんなの通学路』は、世界の通学路の写真をあつめた写真集のようなドキュメンタリー絵本でした。2019年の『そうだったのか! しゅんかん図鑑』に似ています。
2018年の青少年読書感想文全国コンクールの結果は、1位から下位の賞まですべて(内閣総理大臣賞, 文部科学大臣賞, 毎日新聞社賞, 全国図書館協議会長賞, サントリー奨励賞の5つ)を見ると、なんと『すごいね! みんなの通学路』は7作品も入選していました。他の課題図書は少なくて1作品、多くても4作品でしたから、『すごいね! みんなの通学路』は審査員に人気だったことがうかがえます。
理由は容易に想像できます。『すごいね! みんなの通学路』は、きっと審査員も「この本でどんな感想文を書いたのだろう」と興味をもっていたはずです。本来ならば、書き出しを工夫して読み手の興味をひきつけなければいけないところを、『すごいね! みんなの通学路』ならば審査員自身が興味をもって感想文を読み始めてくれますから、読後の心象はかなりよくなるはずです。
さらに、感想文が「書きにくい」本であるということは、子どもから出てくる感想もステレオタイプのものではなく、非常に個性のあるバラエティに富んだ内容の感想文ばかりが集まるはずです。審査員も人間ですから一度にたくさんの感想文を読んでいると疲れてきます。似たような感想の文章をたくさん読む中で、内容のまったく異なる感想文に出会えば鮮烈な印象が残りやすくなります。他の課題図書の感想文と読み比べると、個性という評価点でかなり有利にはたらくはずです。
「賞がもらえる書き方」の本
「賞がもらえる」と話題のこちらの本をご存知ですか?
『読書感想文書き方ドリル』
メディアでも話題沸騰!
2018年にはフジテレビ系「ノンストップ! 」サミットや朝日放送テレビ「おはよう朝日です」で紹介されて、すさまじい反響がありました。
本当に「賞がとれる」
『読書感想文書き方ドリル』は「賞がとれる」と話題ですが、この本の通りに書いてホントに賞がとれました!「『賞をもらいました!』の声続々! という宣伝文句も伊達じゃない!!
もうイライラしない!
全編を通して語り口調で解説される「感想文の書き方」は子どもが一人で読むことができます。
「さあ、やってみよう」「いよいよ、挑戦だ」「さて、できたかな」と、まるで大竹先生が目の前にいるかのような解説を読んでいるとつい感想文を書きたくなってくるから不思議です。
子どもが自分から書こうとしてくれるので、夏休みのママのイライラは激減します!
著者の経歴がスゴい!!
以下、「BOOK著者紹介情報」による著者略歴です。
お寺で作文! こちらが大竹先生!
東大医学部を中退して私塾!
1970年愛知県生まれ。旭丘高校から東京大学理科三類に入学するも、医学に疑問を感じ退学。その後、私塾を始める。
私塾での疑問を東大院で研究!
現場で授かった問題を錬磨するために、再度、東大大学院に入学し、そこでフランス思想を研究した。
現代の寺子屋作文教室講師!
現在は、東京・横浜・鎌倉で「てらてつ(お寺で哲学する)」やお寺での作文教室を開きながら、「共悦」「共生」のテーマに挑んでいる。『超訳モンテーニュ』編訳者、思想家、教育家、(株)禅鯤館代表取締役。
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この本の中身がスゴい!!
大竹氏の経歴も異色ですが、本の中身もこれまでの「感想文が書ける本」とは大きく異なります。「まえがき」を読んでみたいと思います(Amazon商品紹介より)。
子どもへの熱いメッセージ
読書感想文には、「正しい答え」はない。あるのは、「きみの答え」だけだ。
もちろん、テーマのおもしろさや説得力、着眼点などで上手い・下手はできてしまう。ただ、この上手い・下手は、審査員が評価しなければならないときに出てくる問題。どちらかと言えば、読書感想文の「おまけ」の部分だ。
まず、「きみの答え」を書く! それで満点が取れるのが、読書感想文なんだ。
東京や鎌倉で、ぼくといっしょに作文を学んでいる子どもたちは、今では自分の発想やアイデアを楽しめるようになっている。でも、最初は「正解強迫症」にしばられていた。だから、心配はいらない。
きみもまず、そこからぬけ出そう。作文の「型」を伝授するのは、その後だ。
この「型」は、武道の型と同じものだ。型を身につけて、ようやく対戦(作文では表現)できる。その型を、今年は「6段階」に設定している(これで、さらに書きやすくなっているだろう! )。6つのステップのうち、ぼくがいちばん読みたいのが「テーマ」だ。ここに、きみがちゃんと「考えたかどうか」が表れてしまうんだよね。
それと、この本のぼくの説明は正解じゃない。きみたちへのヒントでしかないんだ。きみの答えを見つけるために、きみといっしょにぼくは歩く。 でも、ゴールするのは、きみ自身だ!
(「まえがき」より)
親への熱いメッセージ
お母さん、お父さん。
ぜひ、子どもたちの力を信じてください。信じるということは、見守るということです。この本は、考えるための視点やプロセスを伝えるものです。正解を出して、丸写しさせるような代物ではありません。
作文指導をするようになって、はや20年以上が経ちました。私は、思考の入口とヒントを与えることしかしていません。そして、待ちます。すると、子どもたちは自ら作品を生み出します。
もちろん、宿題ですから期限があるでしょうし、夏休み終わりが近づいてもなお、何も手をつけていなかったら、ずいぶん心配されることでしょう。そんなときは、このテキストを参考に、子どもたちと一緒に考えてみてください。一緒に読む時間は、半日くらい。そして、一緒に考え、一緒に書くのは、2時間くらいでしょうか。つまり、一日、子どもたちとの読書体験をぜひ楽しんでください。
(「まえがき」より)
「書き方」は本格正統派!!
低学年から高学年まで、小学校の全学年に向けられたこの本の書き方は感想文テクニックの真髄です。だから、学年指定をする必要がありません。
「6つの質問」で論点を整理
感想文を書くための大切な「6つの質問」を使って、読書感想文を仕上げていきます。以下、Amazonおよび楽天ブックスに掲載されている「試し読みページ」より引用しています。
「6つの質問」
1. 「あらすじ」について
2. 「面白かったと思うところ」について
3. 「本のテーマ」について
4. 「考えてみたいこと」について
5. 「比べてみたいこと」について
6. 「自分の意見」について
面白かったところ
「この本の中で面白かったところはどこかな? その場面や登場人物、登場人物の言葉を挙げてみて」
本のテーマ
「この本のテーマは何だと思う?」
考えてみたいこと
「この本を読んでじっくり考えてみたいことは何かな? 質問の形で書いてみよう」
比べてみたいこと
「この本の内容を、きみが知っている昔話や寓話と比べてみよう。(中略)体験でもオッケーだ!」
自分の意見
「この本を読んでじっくり考えてみたいこと(4つ目の質問)で書いた問題に、きみならどのような答えを出すかな?」
言葉にできない子へは助け舟
「6つの質問」はどれも核心をついた質問です。十分な準備をせずに読書感想文を書き始めると、どれもが曖昧で、どれもを同時に漠然と考えてしまいがちな6つの論点です。
このような難しい論点がパッと思いつくはずはありません。そのことをこの本はちゃんと想定してくれています。
おっと、この6つの質問にどう答えればいいか、わからない人もいるよね。では、そういう人のために、ぼくがちょっとやり方をお見せしよう。
本書の中では『さかさまさかさま』という本を例にとり、「6つの質問」への回答の仕方を、実際の例文を添えて教えてくれています。こちらは4年生を想定して書かれています。
具体的には以下のように書かれています。(ここからもすべてAmazonおよび楽天ブックス該当ページからの引用です)
面白かったところ
「この本の中で面白かったところはどこかな? その場面や登場人物、登場人物の言葉を挙げてみて」
赤い星、青い星の人が最後に同時につぶやく言葉「ねえ、なにがいけなかったのか、きみにはわかる?おねがいだから、いっしょにかんがえて」
本のテーマ
「この本のテーマは何だと思う?」
「正しさ」「正義」
考えてみたいこと
「この本を読んでじっくり考えてみたいことは何かな? 質問の形で書いてみよう」
ある行動が「正しい」かどうかは、だれが決めるのか
比べてみたいこと
「この本の内容を、きみが知っている昔話や寓話と比べてみよう。(中略)体験でもオッケーだ!」
「アリとキリギリス」
夏の間、ずっと遊んでいたキリギリスは、冬に食べ物がなくなり、ありに食べ物をもらおうとした。しかし、アリはそれを断った。このアリの態度は、アリからすると正義かもしれないが、キリギリスにとっては残酷だ。
自分の意見
「この本を読んでじっくり考えてみたいこと(4つ目の質問)で書いた問題に、きみならどのような答えを出すかな?」
「正しさ」は絶対のものではない。何が正しいかは人によってちがう。私が正しいを思っていることが、ほかのだれかにとっても「正しい」とは限らない。自分が思う「正しさ」を、人に押しつけないようにしようと思う。
課題図書以外は感想文例あり
「6つの質問」への答え方を示してくれた後は、親切にも感想文に仕上げてくれています。例えば『さかさまさかさま』の例では次のような感想文が書かれています。
『さかさま』を読んで
4年1組 大竹けい「赤い星」と「青い星」の人々は、それぞれ幸せにくらしていました。
しかし、赤い星の人は青い星からくるにおいが、青い星の人はあかいほしからくるけむりが気になってきました。
このにおいとけむりは、元はと言えば、それぞれ自分たちの幸せを追い求めた結果、生まれたものでした。でも、お互いにとっては、とても迷惑なものなのです。
そのうちにがまんできなくなり、戦いが始まってしまったという話です。
わたしは、この本の最後で、赤い星、青い星の人が同時につぶやく、「ねえ、なにがいけなかなったのか、きみにはわかる?おねがいだから、いっしょにかんがえて」という言葉が印象に残りました。
そこで、わたしは「正しさ」「正義」ということについて考えてみたいと思います。ある人の行動が「正しい」かどうかは、だれが決めるのでしょうか?
たとえば、「アリとキリギリス」で、夏の間ずっと遊んでいたキリギリスは、冬に食べ物がなくなり、アリに食べ物をもらおうとしました。しかし、アリはそれをことわりました。このアリの態度は、アリからすると正義かもしれませんが、キリギリスにとっては残酷なものです。
「正しさ」は絶対のものではなく、何が正しいかは人によってちがうということでしょう。わたしが、正しいと思っていても、ほかのだれかにとって「正しい」とは限らないということに気づきました。
この本を読んで、わたしは、自分が思う「正しさ」を人に押しつけないようにしようと思いました。
こちらの感想文例は4年生向けの感想文とされていますが、字数はおよそ700字です。4年生の読書感想文は通常1200字以内なので、950字~1100字は書かなければいけないので字数は大幅に足りません。また、4年生が書くべき漢字やすべき改行など、このまま丸写しをすることはできません。
書きたくなる仕掛けが巧い!!
「6つの質問」について詳しく解説をしてくれたら、本書はいよいよ「課題図書の感想文を書こう」に突入します。
課題図書の解説ページになると、とたんに例文が少なくなります。「この本のあらすじを考えよう。どんなお話だったかな?」と聞かれて、答えを書くスペースを前にしても上手な要約文はなかなか出てこないものです。「ああ、ここからは自分で考えなきゃいけないんだな…」「やっぱり感想文は難しいじゃん!」と少し後ろ向きな気分にもなります。
しかし、ここでも丁寧に導いてくれます。
「あらすじの解答例と解説」
あらすじの答えの例は、あえて書かないでおこう。
さあ! ここからが本番だ!
きみは『魔女ののろいアメ(低学年の部の課題図書)』をえらんだか! ふむふむ。
で、どうかな? かんそう文、書けそうかな? まあ、あれだ。「ぜんぜん書けるぜ!」って答えがかえってきたら、たのもしすぎてぼくはふるえてしまう(お母さん、お父さんも、きっとね)。
でも、どちらかというと、「え? まだぜんぜん書けそうにないよ…」という答えが多いかな。じゃあ、これからいっしょにすすめていこう。
まず、きみがすべきこと、それはこの本の「あらすじ」を書くことだ。あらすじというのは、いわばレストランのメニューになる料理の写真と名前だ。
たとえば…、「今日は『ブラオブリア=サバラン』を食べてもらうよ! 味わってね!」と友だちがとくいげに言ってきたら、きみはどう?「え?」となってしまうよね。
食べる前に、その「ブラオブリア=サバラン」を教えてよ! ってなるよね。写真を見せてもらえると、その料理がどんなものかだいたいわかるはずだ。
この「だいたいわかる」っていうのが大切なんだね(ちなみに「ブラオブリア=サバラン」は、ぼくがフランス語でかってに作ってみたことば。ブリア=サバランはフランスの有名作家だ)。
そこで、あらすじがひつようなんだよね。
あらすじというのは、きみが読んだ本が「だいたい」わかるように、きみの作品を読む人に伝えるものだ。「読む人に伝える!」、この気もち、大事にしてね。
「どうせだれも読まないや!」という気もちでは、よい作品にはならないし、きみじしんの考える力や書く力をレベルアップさせることもない。
「ぼくの友だち、わたしの家ぞく、クラスメイトが読むんだ」という気もちであらすじを書いてみよう。……
課題図書12冊は感想文例なし
小学校の部の課題図書は、低学年、中学年、高学年のそれぞれに4冊ずつ指定されていますので、小学生の部には合わせて12冊の課題図書があります。
12冊の課題図書のすべてに、このような語り口調の解説が載っています。ちなみに、課題図書の読書感想文の例文はありません。
続きは、こちらからどうぞ。
読書感想文と「書き方」
読書感想文には確かに「正しい書き方」というものが存在します。それはいくつもの型のようになっていて、本書の「6つの質問」もその一つですが、読書感想文の型のいくつかは小学生のうちに身につけておくことをおすすめします。そして中学生になると、小論文を意識した文章術へとステップアップすべきです(いつまでも感想文の型ばかりで文章を書いていると高校生になって小論文でかなり苦労することになります、特に優秀な学生ほど…)。
書き方次第で地頭がよくなる
読書感想文は書き方次第でグンと成長できるいい機会です。読書感想文を書くといろいろな力を鍛えることができます。複合的なスキルが伸びるので学校のテストだけではなく生きる力そのものが育まれ、結果的に「地頭が良くなる」という効果につながります。
「地頭」や「論理的思考力」という言葉は最近では新しい教育要綱のキーワードのようにも扱われますが、地頭が良いとは頭の回転が早いことであり、頭の回転が早いということはものごとを論理的に理解できているということです。論理性の基本は原因と理由の関係性です。まずは「誰が」「なぜ」「いつ」「どこで」「なにを」「どうしたのか」を正確にとらえる必要があります。
グンと伸びるのは「会話」
お子さんが読書感想文を書いていてグンと成長するのは、試行錯誤している瞬間です。考えをまとめるのは、親と話をしながら自分の考えを一つひとつ言葉で説明することでより効果的になります。
これからに必要な書く力とは
読書感想文は文章力と語彙力を伸ばしてくれますが、読書感想文自体は社会であまり役に立ちません。高校生の小論文授業は、まず体に染み込んでいる感想文の書き方がなぜダメなのかを説明するところから始めますが、それでも何度書いても感想文の型から抜け出せない学生が少なくありません。特に優秀な子ほど感想文の書き方が染み付いていて小論文に苦労する傾向があります。
お子さんが今後必要とする書くスキルのうち、小学校低学年の今のうちに伸ばしておきたいスキルが3つあります。
要点をまとめる力
一つ目は「要約力」です。
文章を読んで内容をまとめる力は大学に入学すればレポート提出という形で、社会に出れば調査書や報告書という形で求められるスキルです。ちなみに要約力は欧米諸外国では大学生の基礎能力で、多くの国で小論文力と同じく中学高校で徹底的に鍛えられます。
すぐに目に見える成果で言えば、国語の試験で「筆者がこの文章で伝えたかったことは何でしょう」などの記述式問題に強くなります。
理由をさがす力
そして、大切なのが「理由を探す力」です。
優秀な学生は国語の読解問題として「理由を示した箇所を抜き出しなさい」という抜き出し問題はすぐにできるのに、自分の意見や感想の理由を探すのに非常に時間がかかります。読書感想文を書くときには「どうしてそう思うの?」という質問をたくさんしてあげるとお子さんは伸びます。
相手を想定した文章術
最後は「誰に向けて文章を書いているのかを常に意識するスキル」です。
小・中学生時代に読書感想文でたくさん賞を獲っている学生ほど、この視点を忘れがちです。読書感想文は担任の先生や審査員など、感想文の内容に興味を持っている人が読むものですから仕方がないのですが、大学では、また社会人になってからは相手を想定していない漠然として文章はほとんど意味がありません。
小学生のうちは「お父さん」がおすすめです。「お父さんに読んだ本のことを教えてあげよう」「お父さんはこの本を読んだことがないから、もう少し詳しく説明してあげたほうがいいんじゃない?」などと会話をすすめてあげてはいかがでしょうか。おばあちゃんや親戚のおじちゃんでも構いませんが、できるだけ親しい人物の方がよろしいと思います。
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