【このページの目次】
のびのびと自由な教育
そんな印象を持たれやすい「モンテッソーリ教育」と「シュタイナー教育」の違いを、特徴的なポイントに絞って、簡潔に分かりやすく解説してみます。
まず、簡単に共通点から見てみましょう。モンテッソーリ教育とシュタイナー教育には大きな共通点が2つあります。これが両者を混乱させる遠因にもなっています。
共通点
「子どもを尊重」
モンテッソーリ教育では「子どもが主役」などと表現されますし、シュタイナー教育では「子どもの魂が求めるものを与える」などと言われ、教育理念には大きな違いがあるのですが、実際にやっていることは似ています。
モンテッソーリ教育でもシュタイナー教育でも、日本の幼稚園や義務教育のように「さあ、次はみんなでコレをしましょう」ということは基本的にはありません。尊重されるのは子ども一人ひとりの興味であり、意思です。集団のために個人の活動を遮られることは、例外はありますが、基本的にはありません。
「タイミング」
モンテッソーリ教育では「敏感期」と呼び、シュタイナー教育では「目覚める時期」などと言われますが、大切にしているものは共通しています。
トイレトレーニングも、絵を描くのも、字を覚えるのも、それぞれ「その子にあった最適なタイミングを逃さず、その時がきたらやる」と考えます。だから、5歳になってもトイレに行けない子もいたり、7歳になっても上手に形を描けない子がいたりもします。しかし焦らず、すべてその子の個性と捉え、個性を尊重し、本人がやる気になったらサポートするという考え方です。
さて、モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点は、「子どもの意思を尊重し、子どものやる気を尊重する」ということでした。では、モンテッソーリ教育とシュタイナー教育はどこがどのように違うのでしょうか。
相違点
頭のモンテ、心のシュタ
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育を比較するときによく登場するキーワードです。これを言葉を補って言い直しますと、このようにも言うことができます。
モンテッソーリは「知能」を伸ばす教育
シュタイナーは「感性」を伸ばす教育
モンテッソーリ教育の創始者マリア・モンテッソーリは障害児教育を専門に研究した医者でしたから、モンテッソーリ教育の原点は知的障害児をどうしたら健常児の知能に追いつかせられるか、でした。そのため知的教育に特化しています。
一方で、シュタイナー教育の創始者ルドルフ・シュタイナーは哲学者でした。「人はなぜ生まれてくるのか」「人はなぜ成長するのか」「人は肉体と魂と精神のどこに依存するのか」など、シュタイナーの教育思想は非常に哲学的です。シュタイナー教育の考えでは「子どもはまず体を作らなければいけない」ので、すべてのエネルギーを体づくりだけに注力できるように、脳のための教育は体が完成すると考えられている7歳までは行いません。
感覚のモンテ、感性のシュタ
「モンテッソーリ教育で大切なのは手先の動き」
「シュタイナー教育で大切なのは心で感じること」
「感覚」と「感性」という言葉に同じ漢字が使われているために、一見すると、これは非常に似ているとも思われがちですが、両者は似て非なるものです。モンテッソーリ教育のキーワードが「感覚」で、シュタイナー教育のキーワードが「感性」なので、こうして対に並べて表現されたりしますが、言葉を補完するとそれぞれの内容は、
感性「を鍛えるため」のシュタイナー
という意味あいがありますので、第一の違いである「頭のモンテ、心のシュタ」とほぼ同じ意味合いを含みます。
教具のモンテ、自然のシュタ
次は、モンテッソーリ教育とシュタイナー教育のおもちゃを比べてみます。
「モンテッソーリ教育のおもちゃは知能のための教具」
「シュタイナー教育のおもちゃは自然素材の自然物」
モンテッソーリ教育ではたくさんの教具を使います。マリア・モンテッソーリは当時いろいろな教具を作っては子どもに遊ばせて、知的障害時たちの知能の成長を観察していましたが、知的障害時たちに有効だった教具は健常児の知能教育にも効果があることが実証されました。そのため、モンテッソーリ教育には知能を育むさまざまな教具があり、それぞれが子どもが楽しんで「遊べる」ように改良され、今に至っています。
哲学的なシュタイナー教育ではおもちゃや遊具はすべて自然の素材で作られていますが、これは「人は自分の質と異なるものには反感を、質が似ているものには好感を持つ」というシュタイナー教育の考え方に則り、「子どもはよろこびの中で成長しなければいけない」ので「反感」を持ってしまう異質なものはできるだけ排除しようとするからです。人間にとってはプラスチックよりも自然のものの方が性質が似ています。だから、おもちゃはすべて木や布でできていて、プラスチック製のおもちゃは使いません。
まとめ
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点を2つ、相違点を3つ、特徴的なものをご紹介しました。それぞれの教育法のたいだいのイメージはつかめましたでしょうか。
さらに、もう一つ興味深い共通点を紹介させてください。それはどちらの教育法にも極端な賛否両論があることです。「自分が選んだ教育法が最高だと信じ、心酔し、忠実に実践している」肯定派のご家庭がある一方で、他方「教育者は自分の教育法が最高だと信じきっていて他の意見に耳を傾けず傲慢」だと感じた人や「子どもにその教育を受けさせていると親も子も自分たちを特別な人間だと思っているようで苦手に感じた」と言う人もいます。
もう少し詳しく知りたい方には、家庭で取り入れる時に参考になるポイントに絞って解説しました次の記事もおすすめです。
関連記事『5分で読める!モンテッソーリ教育って何?家庭で取り入れるヒントに』
関連記事『5分で読める!シュタイナー教育って何?家庭で取り入れるヒントに』
モンテッソーリ教育にもシュタイナー教育にも、家庭で簡単に実践でき、かつ、やればすぐに効果がある教育テクニックがあるのは事実です。やればすぐに効果があるので、お子さんは楽しく遊べますし、遊びながら大切なことを教えてあげられます。お子さんのために、その教育テクニックを上手に取り入れてみませんか?
この記事は筆者のモンテッソーリ及びシュタイナーの学校訪問体験及び専門の先生による外部幼児のためのイベント参加体験に加え、関連書籍などを元に執筆しています。
こちらの記事も読まれています