胎動も感じるようになって、お腹が日に日に大きくなって、いよいよ出産を意識するようになると、陣痛のことがどうしても気になってしまって…。出産レポを読みまくりました。出産レポを読むことは出産の疑似体験にも励みにもなり、他の方の幾多の出産レポにとてもお世話になりました。微力ながら、私の経験もどなたかのお役に立てば嬉しいと思い、ここに残しておくことにします。
(※)ソフロロジー出産について
ソフロロジー出産のページから来てくださった方へ。第一子の出産ではソフロロジー式イメージトレーニングのやり方を間違えていました。なので、陣痛時のソフロロジーの効果はまったくありません。ソフロロジー出産に成功した出産レポはこちらをどうぞ。
【このページの目次】
陣痛、始まる
予定日1週間くらい前
毎晩お腹が張るたびに「これが陣痛かも!」と思うが陣痛ではなくガッカリする。
初めての出産はとても不安で、夫に立ち会ってもらいたいと思っていました。夫の仕事の都合で、赤ちゃんには予定日前に産まれてきてほしかったので、「パパに立ち会ってほしいんだ、なるべく早く産まれてきてね」と赤ちゃんに毎日お願い。ネットで見つけた「陣痛が来る」ジンクスを毎日いくつも試していました。リポビタンDを飲んだり、焼き肉を食べたり、雑巾がけしたりしました(笑)が、陣痛もおしるしも何にもなく、予定日が近づき夫婦そろって焦る毎日。
「◯◯に産まれてきてね」ってお願いしてたら、赤ちゃんが叶えてくれました!という話を聞いていたので、ずーっと声をかけ続けてはいました。私の場合は3回の出産で希望するタイミングで生まれてくれたのはこの時だけでした。2回目は早く、3回目は遅かった…。
予定日4日前
午前1時ごろ
夜もふけた頃、なかなか眠れずに布団でうとうとしていると、恥骨のあたりから「カコン」という獅子おどしのような音がして驚く。同時に、腰に重い痛みが走る。しばらく忘れていた生理痛のような痛みで、ちょっと懐かしく思う(笑)「陣痛かも!」と疑うも「やっぱり違うかな」とも思う。
毎晩お腹が張るたびに「これが陣痛かも!」と思いつづけて陣痛ではなかったので、この時も「また違うのかも」と思いました。
20分後
うとうとしていると、また「グンッ」と腰が痛み「やっぱり陣痛なのかな」とのんびり考える。腰の骨を、背中のエステのように手の甲で直接押されているような鈍い痛み。生理痛の痛みにも似ているけど、より『骨』自体が痛む感じ。
30分後
また痛む。ちょっと痛みが強くなった気がして、「きっとこれが陣痛に違いない」と思う。隣で寝てた夫を起こす。これ以降、陣痛が来るたびに夫が時間を描き留めてくれる。(陣痛の時間を測るときは人に頼むより「陣痛アプリ」がおすすめです)
午前2時ごろ
20分~15分間隔で痛みが来たり、ひいたり。痛みがだんだん強くなる。
痛みは尾てい骨のちょっと上のあたりで、エステでの体重をかけられているような鈍い痛みからハンマーで叩かれているような固い痛みに変わってくる。
陣痛が来るとトイレに行きたくなり、トイレから帰って横になると陣痛が来る…感じで、陣痛のたびに布団とトイレを往復する。
午前3時ごろ
痛みが15分~10分間隔になる。痛みが強くなり、横になってるのが辛くなり、トイレにこもる。痛くて痛くて、陣痛が来ると息ができない(本当ならここで長くゆっくり息を吐き続けて、酸素を赤ちゃんに送ってあげなきゃいけなかった)。トイレで陣痛を3回~4回やり過ごすと、眠くてダルくて横になりたくて布団に戻る。
だんだんと痛みが強くなり、スムーズに歩けなくなる。布団を出てトイレに向かう廊下で陣痛が来ると、廊下の途中で痛みで動けなくなる。痛みが弱まると歩けるようになってトイレに行ける、という感じ。痛みは、尾てい骨の上をハンマーで叩かれている感じは変わらず、痛みの程度だけがどんどん強くなって、尾てい骨あたりから腰全体に痛みがひびく。
スポンサードリンク
午前4時ごろ
痛みはまだ15分~10分間隔。十何度目かのトイレに行くと、トイレットペーパーに血がついていることに気づく。「これが『おしるし』ってやつかなぁ」と呑気に思う。
一度病院に行って家に帰らされるのがどうしても嫌で、この時、病院に電話しようとは少しも思わない。痛みはもっともっと強くなって、便座に座る姿勢が辛くなる。便座に座っているのもきついけど、動くこともできず。トイレで陣痛が来たら、便座に空気椅子(笑)。痛みは尾てい骨とか腰とかそういうレベルの痛みでなく、もう骨盤全体がガンガン痛む。
午前5時ごろ
痛みの間隔が10分より短くなり、痛みはますます強くなる。陣痛が来ると声を出さずには痛みをこらえられなくなる。が、陣痛の間隔がなかなか5分にならず、病院にはいつ電話をしたらいいのか迷う。一度病院に行って家に帰されるのが「やっぱり恥ずかしい」って思って、結局電話をしない。振り返ってみれば、この時電話をしていてもおそらく家に帰されることはなかっただろう。
午前5時半ごろ
痛みの間隔が突然3分になった!けど、次はまた8分。その後は4分、7分、6分、8分…。病院に連絡するか迷いながら、痛みに耐える。結局電話しないことに(この時に電話をするのがベストタイミングだったはず。そうすれば分娩台で着替えたり何たりの時にあれほど苦しくなかったと思う)。痛くて痛くて、陣痛中はもうまったく息ができなくなる(息子、ごめん)。
病院へ
午前6時ごろ
西の空が明るくなってきた頃、陣痛の間隔が2分になったかと思うと、4分、3分、4分、2分…と、陣痛の間隔が突然5分をきって慌てる。
産院に電話をして、陣痛が3分になったことを伝えると、「じゃあ準備をして来てください。何分くらいで来れますか~?」とゆったりのんびり言われて、「あ、まだ大丈夫なんだぁ」と思う。で、準備しながら「こんなに痛いのに家に帰らされたらどうしよう」とやっぱり心配する。だって、他の方の出産レポには、そんな例がたくさん紹介されていたから。
陣痛の間隔は短いし、痛みもひどくて、なかなか洋服に着替えられない。なんとか準備して、陣痛の合間を狙って外へ出て、陣痛の合間を狙って車に乗る。破水に備えて、念のために車内ではバスタオルの上に座った。
心配性のせいで荷物は大量で、「あれもいるかも、これもいるかも」と荷物はなんとバッグ3つ!(出産入院に必要なおすすめの持ち物はこちらにまとめています)自分じゃ持てないので、夫が全部持ってくれた。私はバスタオル1枚握りしめて、5分か10分か分からないけど有り得ないほどの時間をかけて車に乗り込んだ。
車の中でも何度か陣痛が来て、車の揺れが腰にひびき激痛。ボンネットとシートベルトを握りしめて、腰を浮かせて耐えた。ここでも空気椅子(笑)
車が産院に着くと、また陣痛がきて、駐車場で「ちょっと待って!」と陣痛に耐える。診療時間前なので、裏口からインターフォンで鍵を開けてもらって中に入る。と、また陣痛。助産師さんが出迎えてくれて、私を見て「けっこう辛そうね。おうちで頑張ったのね~」とまたのんびり一言。とりあえず家に戻る必要はなさそうだとホッとする。
私がお世話になった産院には助産師さんがたくさんいて、ふだんの妊婦健診でも助産師さんが体重測定をしてくれたり、NSTをつけてくれたりしてくれるので、たいていの助産師さんとは顔見知りだったが、このとき出てきたのは初めて見る助産師さん。若くて、同じ30代っぽい人で、ちょっと緊張する。
即、LDR室へ
午前6時半ごろ
お母さんも旦那も一緒にLDR室に通される。
「ぜんぶ脱いでこれに着替えてくださいね~」と言われたので、ブラジャーも脱いでぺらぺらの分娩着とパンツだけになる。この時はまだ陣痛のあいだを狙って自分で着替えられた。部屋にはお母さんも旦那もいた。
のちのち分娩台になる、だけど今はごく普通のみどり色のベッドを指差して「自分で乗れますか?」と聞かれる。「乗れます」と答えると、また陣痛。私を見て「ゆっくりでいいですよ、痛みがなくなったら乗ってくださいね~」。
ここで一旦、お母さんと旦那が部屋から出される。
ベッドに横になると「パンツも脱ぎますね~」とパンツを脱がされ、前開きの産褥ショーツを履かされる。脱いだり履いたりは助産師さんがやってくれたけど、腰を浮かせるのが辛かった!
助産師さんが手早くNSTをつけてくれる。陣痛の線グラフはモニターにもつながれ、痛みが視覚化される。すごく痛いのにモニターでは線グラフが半分くらいしか上がっていないのが見えて、「この倍くらい痛むのかっ(涙)」と途方に暮れる。
「子宮口を見てみますね~」と言いながら、助産師さんがビニールの手袋をはめる。脚を開き、助産師さんが中に手を入れて子宮の大きさを見てくれる。「5センチですね」
「点滴の針を刺しますね」と言って、助産師さんが手の甲に針を刺す。が、点滴はまだつながれず。
ガラガラといろいろな機械が部屋に持ち込まれて、部屋の中にちょっと緊迫感が。
助産師さんが部屋から出ていくと、母と旦那が入ってきた。夫はおろおろしながらもすぐに私のところに来てくれて、手をにぎってくれた。母はまるでわがもの顔で物珍しそうに部屋をぐるりと歩き回って、無造作に私のお腹をポンポンと叩いて「もうすぐかな」とニヤリ。その時ちょうど陣痛がきてて、その『ポンポン』が痛かった!母は普段から自分の妊娠時と私を比べては小言を言っていたため日頃の鬱憤も加わって、私は半分キレる。「痛いから触らないで!」
午前7時ごろ
何度か陣痛が来て、陣痛はどんどん痛みを増し、あおむけで寝てるのが辛くなる。「ちょっと子宮口見てみましょうか~」と入ってきてくれた助産師に「横むいてもいいですか?」と聞くと、「あおむけの方がいいけど、どうしても辛くなったら横向いていいよ」と言われたので、あおむけで頑張る。
この辺で「ではご主人だけ。お母さんは外でお待ちください」と助産師さんが母を外に出してくれた。
旦那と二人、ここからの1時間が辛かった!
腰が痛み出すとNSTの線グラフが上がって、腰はガンガン痛み、線グラフは8分目くらいで水平移動、痛みが治まり出すとグラフも下がる。
もうものすごく痛いのに、モニターに映る線グラフの山はまだ8分目あたりで気が遠くなる。
「痛みが来たら、『ふぅー』っと長ぁ~く息を吐いてくださいね。ご主人も一緒に息を吐いてあげてください」とアドバイスをもらったので、旦那は素直に私に呼吸を合わせてくれる。が!その口の形が気に入らない!「『い』の口じゃないってば!『う』の口で『ふぅー』って吐いて」と、自分でも訳のわからないことで旦那にキレる(笑)←今だから笑えるけど陣痛中は痛みでイライラ絶頂
この時間の陣痛の間隔は「線グラフの痛みの山がモニターから消え出すと次の陣痛が来る」くらいの間隔で、モニターの左端に前回の陣痛の山が去っていくことに恐怖心が芽生える。
痛みの山が左端に近づくと、もう次の陣痛が怖くて「あぁぁ、来る来る来る来る… キタあ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!」って感じ。陣痛が終わると半泣き。
30分に1回くらい助産師さんが子宮口を見にきてくれる。子宮口の大きさを見てくれるたびに、子宮の内筋を下にぐんぐん押し下げてくれる(たぶんストレッチの要領で筋肉を伸ばして、会陰が傷つかないように柔らかくしてくれているのだと思うけど)が、それが激痛。でも「やめてください」なんて言えないし、文字どおり歯を食いしばって耐える。
スポンサードリンク
午前8時ごろ
「子宮口は8センチですね、そろそろ少しずつ準備しようか~」と、助産師さんが産褥ショーツを脱がせてくれて、手の甲の針に点滴をつないでくれた。
助産師さんが隣の部屋でガチャガチャ何かを準備してるのが聞こえる。助産師さんは部屋を出たり入ったり。「のどが乾いたら飲んでね~」と、アシスタントのおばちゃんが紙パックのウーロン茶を持ってきてくれる。
だんだん、痛みの谷がなくなり出す。陣痛が来るとものすごく痛むんだけど、痛みが弱まっても完全には痛みがひかず、そのまま次の陣痛が始まる。
何度目かの陣痛で、痛みが始まり出したかと思うと突然グンッと異様なほど痛み、思わず「あ゛ぁぁぁっ!」と声が出て、力なんて入れようと思ってないのに、いきんでしまって、おしりに力が入る。
私の声を聞いて、助産師さんが走って部屋に入ってきて、子宮口を診てくれた。「あら?9センチ開いてますね」と助産師さんが初めて緊張感のある声を出す。
うわさの分娩台…
「ご主人は外でお待ちください」と旦那が外に出され、寝ていたベッドの落下防止の柵がはずされ、ベッドの下から手すりが出てきて、ベッドの足下の部分がはずされた。「あ、見たことある『分娩台』の形だぁ」と思う余裕はある。
「じゃあ、ここを手で持って陣痛が来たらグッと引っぱってね。足はここで、陣痛が来たらしっかり踏ん張ってね」
陣痛が痛くてあおむけに寝てられないから横向いて寝てたのに、ベッドが分娩台になっちゃって、否が応でもあおむけに。陣痛なんて来てなくても、ベッドにあおむけになってるだけで、もう息がしにくいほど辛い!
腰から下の手術着は大きく開かれ、お腹から脚にかけて大きなシートが掛けられた。「ちょっと腰、浮かせられますか~?」と言われるけど、腰を浮かせるなんて無理!アシスタントのおばちゃんが腰を持ち上げてくれて、助産師さんがサッと腰の下に防水シートをすべらせてくれた。
「おしもの毛を剃りますね~」と助産師さん。ジョリジョリジョリと部屋にひびく。上手に素早く剃ってくれて、「慣れてるんだなぁ~」と思ったのはいいんだけど、とにかくあおむけの姿勢が辛い。
「赤ちゃんの出口をキレイにしますね~」と除菌してくれる。注射の前のように股がスースーする。
これから助産師さんとアシスタントのおばちゃんがずっと付いていてくれて、陣痛のたびに一緒に「ふぅー」と息を吐いてくれて、「力抜いて~」「長く吐くよ~」「大丈夫だよ~」と声を掛けてくれた。
助産師さんは何をするにも小走りで、痛みの中で「そろそろなのかな?」とかすかに思う。ほかのスタッフも出勤してきたのか、隣のナースステーションがすごく慌ただしくなったなと感じた。
陣痛が来るたびに、助産師さんは「まだいきんじゃだめだよ~、頑張ってね~」と言いながら、おしりを押してくれる。これが楽で楽で、すごく不思議だった。「これが世に言う『テニスボールでいきみ逃し』なのか!」と思う。痛みが度を超えていて息すらできない状態でも、こんなことは冷静にいろいろ感じるものだと自分に驚く。
午前8時20分ごろ
腰が痛くて痛くて、腰を浮かしてもひねっても何しても、激痛から逃げられず、「はぁはぁはぁはぁ」息が粗くなり、異様にのどが渇く。ウーロン茶、大活躍。
こんなに「はぁはぁはぁはぁ」言ってるのに、助産師さんは「まだ大丈夫そうね~」なんて言う。のどがカラカラで、無性に何か飲みたかった。
何度目かに子宮口を見てもらったとき、助産師さんが「子宮口、10センチです」と、私でなくアシスタントのおばちゃんに言った。手袋をはずしながら、隣のナースステーションに「子宮口全開大です!」と助産師さんが叫ぶ。
ナースステーションから助産師さんが二人とアシスタントのおばちゃんが一人、パタパタと入ってきた。
助産師さんは陣痛のたびに会陰をぐいぐい下に押し下げる。アシスタントのおばちゃんは陣痛と陣痛の合間に、私にウーロン茶を飲ませてくれた。
出産
「もう赤ちゃん見えてるよ~、頭見えてるからね~」と会陰を押し広げてくれるけど、陣痛が治まると赤ちゃんが引っ込むらしく「今痛くないよ~、力抜いてね~」、「力入れたら赤ちゃん引っ込んじゃうよ~」、「陣痛に合わせていきむよ~」
陣痛のたびに力を抜けと言われたけど、息を吸うのが精一杯で、力を抜くとか抜かないとかには全然考えが至らない。そのうち息も吸えなくなって、「鼻で息吸うよ~、口で吸っても赤ちゃんに届かないよ~」と言われるけど痛くて痛くて「息を吸う」ってどうしたらいいのか分からない。
「『ふぅー』だよ、長く吐けば息は自然に吸えるからね~」と母親学級で聞いたセリフと同じことを言われたけど、もう痛くて痛くて息を吐くなんてできない!「ハッハッ、ハッハッ」と口で、息を吸っては吐き、吐いては吸い、勉強した呼吸法なんて全然できない。
陣痛が来ると痛くてどうしても息を止めてしまう。息を止めてしまうと、息が十分に吸えなくて、息を吸うたびに「ひぃぃぃ、ひぃぃぃ」って喉から変な音が出る。変な音は出るのに息は全然吸えなくて、とうとう酸欠で「ピーッピーッ」と機械からアラーム音が鳴り出した。
機械が鳴り出したら、アシスタントのおばちゃんが鼻用の酸素マスクをつけてくれた。だけど機械の音は止まらず、「力抜いて息吸うよ~、酸素なくて赤ちゃん苦しいよ~」って言われるけど、内心「そんなことできるかっ!!!」って叫んでた。ソフロロジーの効果、まったくなし(笑)
(この反省を活かして、2回目、3回目の妊娠中は意識して息を吐く練習をしたら、ずいぶん上手にできるようになって酸素マスクのお世話にはならずに済んだ)
「ハッハッ、ハッハッ」息ができなくて、酸欠で頭がクラクラしてきたとき、思い切って鼻だけで息を吸ってみた!「すぉぉぉぉ」と鼻から変な音がして、鼻の穴の中がヒリヒリするほど一気に空気が入ってきた。
そしたら初めて肺が膨らんだ。酸素が入ってきたと思った。機械の音も止まった。呼吸は吐く息が大切なんだなと改めて思った。CDであんなに繰り返し聞いていたのに、全然分かってなかったんだなと思った。(ソフロロジーのCDについては別記事「ソフロロジーのCDに収録されてる7つのこと」で書いています)
少しだけ息が楽になったら、赤ちゃんも降りてきてくれたらしい。「赤ちゃん出てくるからね~、赤ちゃんの頭はさまってるよ~、今力入れたら赤ちゃん痛いよ~」とアドバイスをくれながら、助産師さんがアシスタントのおばちゃんに「ご主人を呼んでください」と言ったのが聞こえた。
股に大きなスイカが挟まってるようなイメージも想像もできない感触を残したまま陣痛を2回やり過ごすと、生暖かい大量の羊水と一緒に、ぬるぅ~っと股から何かが出てきた。「すごく気持ちいい」と思った。
ぬるぅ~っていう快感と同時に、あんなに痛かった激痛が消えた。「あ、痛くなくなった。息ができる」と思っていると、「ふぇっふぇっ」という小さな小さな産声が聞こえた。
アシスタントのおばちゃんが鼻の酸素マスクを取ってくれて、助産師さんが赤ちゃんを胸に乗せてくれた。「おめでとうございます」と言ってくれた助産師さんに「ありがとうございました」と返しながら、まだ羊水まみれの赤ちゃんを見た。触るとふにゃふにゃしていて「ウォーターベッドみたいだな」と思った。
混乱してたのか感動してたのか、旦那は何も言わなかった。
しばらく抱かせてくれて、「じゃあ赤ちゃんをきれいにしてきますね~」と言ってアシスタントのおばちゃんが赤ちゃんを連れて行った。旦那も赤ちゃんとおばちゃんと一緒に行っちゃった。
午前8時40分だった。
一人寂しい産後処置
助産師さんが「では胎盤を出しますよ~、ちょっとお腹を押しますね~」と、お腹をグイグイ押しながらへその緒をきゅーっとものすごい力で引っぱる。へその緒がクリトリスにこすれてすごく痛かった。「もう少し下向きに引っぱってぇ~」と思ったけど、疲れてて言葉を出す気にならなかった。
助産師さんがへその緒を引っぱりながらお腹をぐうっと押したとき、またにゅるんと何かが出てくる感触がした。助産師さんは一度胎盤を隣の部屋に持っていき、すぐに部屋に戻ってきた。
すると、今まで部屋の隅の方でじっとしていたお医者さんがおもむろに寄ってきて、助産師さんが「では先生に診ていただきますね」と言いながら先生に手術着を着せた。アシスタントのおばちゃんが私の股の間に椅子を置く。
先生は椅子に座り「ちょっと縫っていきますね~」と言うと、ためらいなくぶすっぶすっ針を刺していく。それが痛くて痛くて。陣痛が鈍くて大きな痛みなら、会陰の縫合はピンポイントで鋭い痛み。陣痛より会陰縫合の方が痛いと書いてた体験談を思い出す。「確かに!」
「力を抜いていてくださいね~」と先生。でも、もう赤ちゃんはいなくて、誰も私の呼吸なんて気にしない。先生が針を刺すたびに息を殺して、上半身を石のように固くして、なんとか我慢。「早く終わって!早く終わって!」とひたすら我慢した。陣痛なんかよりよっぽど体に響く激痛だった。
「はい、いいでしょう」先生が手袋をはずして手術着を脱いでいる間、お股がヒリヒリヒリヒリ。先生がいなくなると、助産師さんがお股についてる血や羊水をきれいに拭いてくれて、血まみれのシーツやタオルを片づけ、ベッドの足下部分をガチャンと付け、手すりを収納。落下防止の柵をつけてもらうころには会陰のヒリヒリも少しは和らいだ。
そんな産後処理をしてくれた助産師さんが出て行くと、アシスタントのおばちゃんが「頑張りましたね~」なんて言って、全身を暖かい蒸しタオルで拭いてくれた。助産師さんが入ってきて、産後の出血量を診てくれた。
そうこうしていたら、赤ちゃんが帰ってきてくれた。きれいに拭かれて、かわいい産着を着てた。旦那も一緒に部屋に入ってきた。アシスタントのおばちゃんは「赤ちゃん、抱っこしますか?」と、赤ちゃんを体の上で抱かせてくれた。あんなに疲れていて、体にまったく力が入らないくらいダルかったのに、赤ちゃんを乗せられると腕に力が戻った。赤ちゃんを落とすかも…なんて不安定感は微塵もなく、すごくリラックスして赤ちゃんを抱っこできた。赤ちゃんの顔を見ながら「出産って一連の所作がぜんぶ本能なんだなぁ~」なんて思った。
読んだ体験談には「感動して、感動して、涙が止まらなかった」なんて書いてもいたけど、私は疲れで、感動とか涙とかそんなの何もなかった。ただ痛かった陣痛が終わってよかったという気持ちと、もうあんな痛い思いはしなくていいんだっていう気持ちと…、赤ちゃんを胸に抱いているのに、とにかく陣痛の痛みのことで頭がいっぱいだった。(出産して赤ちゃんを抱いたときの感想は、ソフロロジーのトレーニングにきちんと取り組んだ2回目の出産と大違いです)
私たち夫婦は子どもは3人欲しいと思っていて、私はつわりも陣痛も「またすぐにこれを経験するんだ!こんなことで辛いなんて思ってる場合じゃない」と耐えてきたのに、このときばかりは「この痛みをもう一回するのは嫌だ」と思った。
旦那と赤ちゃんと家族3人でしばらくゆったりしていると、助産師さんがアイスを持ってきてくれた。アイスを食べ終わると「点滴が終わるまでゆっくりしててくださいね~」と赤ちゃんを連れて行った。旦那も外に出された。
助産師さんは産後の出血を確認してくれて、そしたら急に眠気が襲ってきて、2時間ほど眠った。
午前10時ごろ
午前10時といえば普段の日常なら遅い朝ごはんでも食べ終わる頃。助産師さんが入ってきた音がして目が覚めて、助産師さんが点滴を取ってくれた。「気分はどうですか~?」と、また出血を診てくれた。気分も悪くないし、産後の出血も異常ないということで、入院室に行くことになった。
車椅子に乗るときにトイレに行かせてもらった。トイレは分娩室にあって、ベッドからトイレまで5歩くらいなのに、腰も膝もぐらぐらだし頭はふらふらで「出産ってやっぱり体力使うんだなぁ~」と思った。トイレではおしっこと一緒に大量の血が出た。生理の一番多い日の10倍くらい。「こんだけ血ぃ出りゃふらふらするわけだ」と冷静に分析している自分に笑えた。
LDR室から入院室へ
「自分で乗れますか?」と言われながら車椅子に座って、「これ持てますか?」と点滴の棒を手で持って、車椅子で入院室に連れて行ってくれた。入院室には旦那も一緒。
出産当日の食事はぜんぶ部屋に運んでもらえる。けど、もちろん私だけ。旦那はコンビニに買いにいっていた。私は食べては寝て、食べては寝て、食べることと寝ることで1日が終わった。寝ても寝ても、まだ眠い。眠気が収まったのは夜9時ごろだった。出産当日は赤ちゃんはナースステーションでお泊まりなので、部屋では旦那と二人。名前はもう決めていたし、「食事おいしかった?」なんてどうでもいいことを話してたらまた眠くなった。当然と言えば当然。だって昨日の夜は旦那も私も徹夜ですから。
が、初産の試練(?)は出産が終わったあともまだまだ続く…。
スポンサードリンク
出産翌日
また日が昇り、出産の翌日。母親になって初めての朝。
お股は腫れていて、足をちょっと動かすだけで痛い。すごく敏感で、トイレのたびにズボンを下げる前かがみの姿勢でヒリヒリ、便座に座ろうとしてヒリヒリ、座れず空気椅子でヒリヒリ、おしっこが出るとしみるし、トイレットペーパーで拭こうものなら激痛。会陰の傷から感染する危険があるらしく、トイレでは必ずビデを使うように指導された。だけど、そんなアドバイスなんてなくてもビデを使って、水で洗浄して、トイレットペーパーはゆっくり押し当てて水分を取るくらいでないと皮膚が保たない。ビデの水も水圧を最小にして、腰を浮かせて、さらに皮膚にあたる水の勢いを殺して、やっと水を当てられるくらいにお股の皮膚が弱っていた。
翌日、先生の内診があってシャワーの許可が出た。シャワーを浴びながらお股を触ってみたら、軽くテニスボールくらいに腫れ上がっていた。軽い火傷をした後のように、触るだけでヒリヒリする。シャワー中にも出血したし、体を拭くときにタオルにもついた。血液がついたタオルは別に回収かごが用意されていた。
シャワーを浴びたら母乳指導。片手で乳房を、片手で赤ちゃんの頭を持って、口に乳首をかぷっとくわえさせる。ママの緊張は赤ちゃんに伝わるので、力を抜いてリラックス。「授乳は赤ちゃんの目を見ましょう」と指導されたけれど、私は赤ちゃんの目を見るとすぐに首が痛くなり、車酔いのようなめまいがしたので、ずっと真正面を見てた。
お食事は毎回とても豪勢で感激。
でもトイレが辛い。臨月に入ってからは3日~4日に一度くらいの便秘で、出産日は3日も便が出てなかった。そのたまった便がお腹に詰まってる気がする。
出そうな気がしてトイレに行くけど、いきんで力を入れることはできない。だって痛いし、裂けた会陰部分がまた裂けそうで怖い。諦めてトイレから出るけど、ベッドに横になるとやっぱりお腹に違和感を感じ、不快。出せそうな気がする。
退院日まで
陣痛も辛かったけど、入院中の便秘も辛かった。だってヒリヒリヒリヒリすごく痛い。ちょっと力を入れるだけでヒリヒリが激増!便座に座ろうとするだけでもお股の皮膚が引っぱられて、丸い便座の真ん中に体重をかけて座ると、プチップチッ、治りかけてたお股のどこかがまた裂けていく感覚がある。当然、激痛。
まだまだ悪露が残るから、トイレのたびに生理の5倍くらいの出血。血がつくからビデで洗うけど、水圧がまた痛い。トイレのたびに痛くて、しかも頻尿で(※)1日に10回くらいトイレに行くから、常にお股が痛い。それもこれも浣腸をしてもらえなかったせい。
結局3日目の朝に、我慢できずにいきんじゃった。そしたら思うほどは出てくれなかったのに、お股に「ビリッ」と破れた感覚が!そして激痛!泣きそう…、せっかく痛みも和らいでたのに(涙)
次の出産では、出産前に浣腸をしてもらおうと決意。今回はギリギリまで家にいたせいで(初産だからと助産師さんが油断してたのも原因)浣腸をしてもらえないまま出産しちゃった。次回は絶対に浣腸をしてもらえるように陣痛が来たらすぐに産院に来よう!と心に決めた。2回目の出産レポはこちらです。ご興味があればどうぞ。
スタッフはみなさんとても優しくて、たくさん質問することもできて、疑問点は残らず親切丁寧に答えてもらえて、入院の5日間、まるでお姫さまのような生活でした。
産後の骨盤ケア
産後の骨盤ケアについて調べてみると、「産後するにケアした方がいい」という意見の助産師さんと「ママの体は自分の力で元に戻ろうとするので、産後1週間は何もしない方がいい」という意見の助産師さんがいるよう。
ナチュラル&オーガニックに憧れを持っていて、薬などもできるだけ飲みたくないタイプなので、骨盤に関してはとりあえず入院中は何もしないことにしました。これが大失敗。骨盤ベルトは薬なんかとはまったく違いました!
スポンサードリンク
ソフロロジーの効果
助産師さんや産科の先生には「とてもスムーズで初産婦のお手本のような安産だった」とか「陣痛中にきちんとリラックスして赤ちゃんが通りやすい産道にできてたよ」なんて褒められましたが、今回はソフロロジーのイメージトレーニングの意義をきちんと理解しないまま中途半端なトレーニングしかできなかったので、2人目や3人目に比べると陣痛中はソフロロジー式出産の恩恵をまったく(それでももしかしたら効果は出ていたのかもしれないけど)受けることはありませんでした。
しかし、ソフロロジー式出産の本当の効果は出産直後から充分に現れていたようです。
まず赤ちゃんがピンク色で元気いっぱいでした。肌は本当にふっくらときれいな桃色をしていました。母乳も初乳から十分な量ができましたし、赤ちゃんの方もおっぱいを自分で探す気力もおっぱいを自力で吸う筋力も十分にあって、完母育児にスムーズに入ることができました。
産院を退院してからも、赤ちゃんはよく飲んで、よく遊んで、よく寝てくれました。おっぱいをあげればゴクゴクとよく飲んでくれましたし、起きていればクリクリのおめめで周りをじーっと見ていました(新生児の視力は0.2程度と言われているのでまだ輪郭くらいしか見えていないはずです)し、飲んで遊べばすぐにコトンと寝てくれました。一度寝ると多少揺れたし物音がしてもぐっすり寝てくれました。
また激しい夜泣きがほとんどありませんでした。ときには何をしても寝てくれなくて、寝ついても布団に寝かせるとまた泣くので、朝まで赤ちゃんを腕に抱っこしたままソファでうとうとしたこともありましたが、この程度はきっとどんな赤ちゃんでもあることだと思います。私が「つらい!」「もうイヤだ!」と感じるほど、こんな日が続くことはありませんでしたし、私が体力的な限界を感じるほどひどく泣くこともありませんでした。
赤ちゃんの個人差はあるでしょうが、本当に育てやすい赤ちゃんでした。おかげで私は出産直後からたっぷり寝ることができて、楽をさせてもらいました。
ソフロロジー出産の感想
ソフロロジー出産の効果
陣痛の痛みへの効果
第一子の出産ではソフロロジー式イメージトレーニングのやり方を間違えていました。なので「陣痛時」のソフロロジーの効果はまったくありません。
産後の新生児育児への効果
「産後」のソフロロジーの効果につきましては、当時はまったく分からなかったものの、3人の子育てが落ち着いてきた今ふり返ってみますと確かにその効果を感じていますので末尾に少しだけ記しました。
おすすめの関連記事
▼骨盤ケアはしっかりと!
ソフロロジー出産トップへ戻る
独学で挑戦するソフロロジー出産についてご興味がある方へ。ソフロロジー出産についてはこちらに詳しく書いております。正直に言いましてオススメです! ソフロロジー出産について最初から読む場合はこちらをどうぞ。
ソフロロジー成功出産レポ
より本格的なソフロロジー出産については2人目の出産レポおよび3人目の出産レポをご覧ください。
ソフロロジーのコツ
出産準備をしよう
胎教を楽しもう