角川, 集英社, 小学館, 学研の人気4社の『まんが日本の歴史』の絵を小学生に見せて、どの絵が好きでどの絵が苦手か聞いてみました。さらに、子どものための歴史マンガはやっぱり中を見てから選びたいものなので見開き頁を一括比較しました。
【このページの目次】
歴史の勉強はマンガから
現在では子どもの歴史教育は歴史マンガから始まると言っても過言ではありません。私自身もおすすめしていたものが、サピックスや日能研などの有名進学塾でも(塾として推薦されるか講師が個人的に勧めるかの差はあれ)歴史学習に歴史マンガがおすすめされていると耳にしたことがあります。
4大『まんが日本の歴史』とは
中学受験から大学受験までの基礎になる歴史マンガをお探しならば4大『日本の歴史』(角川, 集英社, 小学館, 学研)の中から選んでおけば間違いありません。
4大歴史マンガの難易度
4大『まんが日本の歴史』の難易度は、難しい順に「小学館」「角川」「集英社」「学研」であると私は考えます。
マンガの難易度としましては「小学館」が大学受験レベルで抜きんでています。他の3社のレベル自体はほぼ差はないもののマンガのコンセプトにより読みやすさが違いますので、それが難易度につながっています。つまり、歴史が好きな子や得意な子には「角川」をおすすめしますし、歴史に苦手意識のある子には「学研」をおすすめしているという意味です。
4大『まんが日本の歴史』のレベルや難易度につきましては、こちらで熱く語らせていただきましたのでお時間がありましたらご一読ください。
口コミは2016年以降に注目
小学生向けの「日本の歴史まんが」は2016年までに業界勢力図がガラリと変わっています。角川も集英社も学研も2016年までに大幅な刷新を行っていますので、口コミを調べる場合にはご注意ください。
どれが好み? 絵を比べよう!
4大『まんが日本の歴史』には難易度がありますが、そもそもお子さんが読んでくれなければ元も子もありません。仮に、すでに成績の良い子が一番平易な「学研」を読みたいと言う場合、無理をしてレベルの高い「小学館」や「角川」を買ってあまり読まないよりも、希望どおり易しめな「学研」を買ってあげて何度も読み込む方が学習効果は高くなります。
多くの場合、歴史漫画を読むかどうかは絵が最重要条件になります。ここでは、4大『まんが日本の歴史』の第1巻「日本のはじまり」と第4巻「平安時代のはじまり」を比較して見てみたいと思います。難易度順に小学館からとしました。
小学館
小学館は『ビリギャル』で一世を風靡した「マンガだけで大学受験ができる」レベルのマンガです。難点は難しすぎて読みにくいため、万人受けしないこと。
『ビリギャル』とは
『ビリギャル』とは偏差値30の学年ビリから慶應大学現役合格を勝ち取った実話。単行本の大ヒット後、有村架純主演で映画化されています。
全24冊 参考価格21,500円
4社の中でもっとも巻数が多く、もっとも高額です。
第1巻「日本のはじまり」
小学館は既に集落ができている場面から始まります。
第4巻「平安時代のはじまり」
小学館はすでに平安京に遷都された状況から始まります。他の3社が、桓武天皇が遷都に頭を悩ませる場面を描いているのと対照的です。すでに平安京に遷都しているために坂上田村麻呂はすぐに出撃しています(笑)
角川
角川の特徴は「東大流」の歴史マンガであること。東大流とは時代の推移や比較など歴史を大きくとらえる歴史学習法で、東大をはじめ難関大学入試の記述問題には非常に役立ちます。デメリットは中学受験など小学生には成績に直結する効果を感じにくいこと。読んでから成績が伸びるまでに時間がかかる傾向があります。
全19冊 参考価格16,500円
4社の中でもっとも1巻あたりの価格が低く、お得感が感じられます。4社の中で唯一ソフトカバー本なのでコスト面で有利な価格設定なのかもしれません。
第1巻「日本のはじまり」
角川はマンモスから描かれ、日本ではなくユーラシア大陸の先史時代から始まっています。
第4巻「平安時代のはじまり」
平安京に遷都するために桓武天皇が試行錯誤する場面から描かれています。旧石器時代から江戸時代までは、角川と集英社は非常に似た仕上がりになっています。
集英社
集英社は「中学受験には集英社」と呼ばれるほど中学受験に強いのが特徴です。重要語句を巧みに組み込んでいるので成績に直結します。デメリットは歴史用語が多く登場するために読みづらいと感じる小学生がいることと、ある程度歴史ができる小中学生には簡単すぎること。
全20冊 参考価格19,500円
4社の中では小学館に続き巻数が多く高額です。
第1巻「日本のはじまり」
集英社は地球の誕生からの時間の流れを描いていて、恐竜時代もちらりと見せてくれています。幼児期に絵本『せいめいのれきし』を読んだことのあるご家庭には特におすすめできます。『せいめいのれきし』の作者はアメリカ人なので有史時代からアメリカの歴史に移行しますが、集英社なら絵本の先史時代からの流れで地球の歴史の中の日本の歴史をとらえやすくなります。
第4巻「平安時代のはじまり」
平安京に遷都するために桓武天皇が試行錯誤する場面から描かれています。旧石器時代から江戸時代までは、角川と集英社は非常に似た仕上がりになっています。
学研
4社の中でもっとも「人物にスポットを当てた」マンガで、歴史嫌いな子でも挫折しにくいのが特徴。デメリットは、入試に直結する歴史用語を組み込むよりも人物の生き様を描いているために学習漫画としての総情報量があまり多くないこと。
全14冊 参考価格15,800円
4社の中でもっとも巻数が少なく、もっともお手頃価格です。
第1巻「日本のはじまり」
学研はなんと現代から始まります。授業中に寝てしまって遺跡発掘へタイムスリップする(夢を見たのでしょうか)場面が描かれます。
第4巻「平安時代のはじまり」
人物にスポットが当てられた学研では、各時代の第1章で重要人物のアップが存在感たっぷりに描かれていて(第1巻「旧石器時代」を除く)、各時代のはじまりが非常に印象的です。平安時代も例にもれず存在感たっぷりの桓武天皇がドンと登場しています。
小学生に聞く「この絵, 好き?」
角川, 集英社, 小学館, 学研の人気4社の『日本の歴史まんが』から第1巻と第4巻の最初の見開きページを印刷して、家庭教師で受け持っている子や親戚の子や近所の子など小学生18人(男子10人, 女子8人)に見せて、どの絵が好きでどの絵が苦手か聞いてみました。その結果がこちらです。
1位 角川
こんな桓武天皇でした
「読みやすい」という意見がもっとも多かったのが「角川」でした。「絵が見やすい」「字が読みやすい」という印象を受けるようで、総じて「マンガの続きを読んでみたい」という意見でした。絵柄や作風は男の子にも女の子にも人気があり、ほとんどの子が4社のうち1番か2番に挙げていました。
2位 学研
こんな桓武天皇でした
2位は「学研」でした。学研は全巻オールカラーですから、小学生は色がついていた方が読みやすいのかもしれません。男の子にも女の子にも人気が高かった「角川」と違って、「学研」はちらほらと3位が見受けられました。その理由が各巻でマンガ作家が変わるから。数人の子に「この時代の絵は好きだけど、この時代の絵はちょっと微妙…」と言われました。
一例としまして、卑弥呼、紫式部、坂本龍馬、伊藤博文の4人を比べて見てみたいと思います。
各巻で作画家が変わるのは学研だけではありません。角川も集英社も複数名の作画家によって担当分担されていますが、全巻を通して読んだ時にもっとも違和感を感じるのは学研です(角川と集英社につきましては個人差があるでしょうが私は作画家の違いにほとんど違和感を感じません)。
3位 集英社
こんな桓武天皇でした
3位は集英社。「サクッと読みやすい」という子がいる一方で、「絵に動きがない」「絵がかたい」という指摘も(笑) また、集英社は『週刊ジャンプ』の出版元なので各巻の表紙が『週刊ジャンプ』の人気連載漫画家によって描かれています。しかし、中身は無名の作家によるものなので『週間ジャンプ』が大好きな男の子などは「表紙は『ナルト』や『ジョジョ』なのに本編では顔が全然違う…」とすごくガッカリしていました。
一例としまして、『ジョジョの奇妙な冒険』の作者荒木飛呂彦氏が表紙を手がけた第2巻を紹介します。
表紙の聖徳太子が「ジョジョ立ち(注)」で抜群の存在感を示しているのに中身はとても普通の少年です(注【ジョジョ立ち】作者の荒木氏がミケランジェロ像から着想を得たという彫刻のように肉体をひねるポーズで『ジョジョの奇妙な冒険』の登場人物独特の立ち姿のこと)。
4位 小学館
こんな桓武天皇でした
この白黒ページの1コマ目の後ろ姿が桓武天皇でした。人物中心ではなく史実中心の小学館らしい桓武天皇だと思います。
絵だけを比較すると仕方ないかもしれません。「絵が古い」「字が多い」「読みにくい」という意見ばかりでした。小学館の『日本の歴史まんが』の魅力は物語自体にあるので、数ページを見ただけでは印象は良くないのでしょう。ある男の子だけは「この昔っぽい絵が好き!」と言っていました。今回のアンケートとは関係ありませんが、例年、小学館は成績の良い子に好かれる傾向にあるマンガです。
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