中学高校の歴史や古文の成績は乳幼児期にどれだけ昔話を読んでもらったか次第か!? 昔話絵本は絵も文章も古臭いからと読みやすい最新版を選ぶのはちょっと待ってください。昔話絵本の知育効果を考えてみませんか?(画像はWikipedia「竹取物語」より)
<元幼児教室講師の読み聞かせ知育>
【このページの目次】
昔話絵本の知育効果
学力は知識と経験のつみ重ね
学校の成績は学校で学ぶ知識だけではなく、その子のそれまでの経験によって裏打ちされています。経験の薄い子は知識だけが上滑りするか、知識が頭に残らない傾向にあります。知的経験は「想像力」や「考える力」など抽象的な生きる力ばかりが注目されますが、学力も経験なしでは飛躍はありません。
「これがあの絵の正体だったんだ…」
古文の便覧を読んでいた女子学生が「ああ、これがあの絵の正体だったんだ」と言っているのを聞いたことがあります。私は経験が知識に昇華した瞬間を見たと思いました。昔話絵本の挿絵は幼い子どもにはほとんど訳のわからない絵だと思います。しかし、読み聞かせをしていると意味は分からなくても親しみを感じ、そこにそうしてあるのが自然に感じられるようになります。そして、教科書や授業や社会科見学などで実物を目にした時に「ああ、あれはこれだったんだ」と実感を伴い学ぶ瞬間がやってくるのだと思います。
歴史と古文の成績がいい
私が一番最初に昔話絵本の効果を感じたのは高等部を受け持っていた頃でした。歴史や古文の成績がいい学生(厳密に言えば成績そのものよりも歴史や古文への知的関心が非常に深い学生)はたいてい読み古された昔話絵本を持っていて、好きな昔話を聞くとほとんど即答できていたからです。昔話絵本が直接テストの点数を上げることはないでしょう。しかし、歴史や古文など現在ではない時間の流れへの根本的な興味をかきたててくれるはずです。だからこそ、昔話に親しんだ子どもたちは早くから歴史にも今とは違う言葉遣いにも興味を示し、自分から学ぼうとするのだと思います。
もちろん「読み聞かせ」の効果も
昔話に特化した効果だけでなく、昔話の読み聞かせにはもちろん絵本の読み聞かせがもつ効果もあります。親子のつながりや基本的な集中力、知的好奇心や語彙力など、総合的な読み聞かせの知育効果は言うに及びません。
昔話絵本を選ぶ3つのコツ
味わいのある絵本を選ぶ
「味わいのある絵」の絵本を
昔話絵本の鉄則は「味わいのある絵本」を選ぶことです。挿絵は想像力をさしはさむ余地がふんだんに残された「人の手の温もりを感じるもの」を選んであげてください。
「手が加えられてない」文章を
昔話というのはもともと各地で伝承されていたものです。それを先人たちが集め、子どもたちに読みやすいように書き直し挿絵をつけてくれた昔話絵本を「再話絵本」と呼びます。当時の「子どもたちが読みやすい絵本」は現代の子どもたちには難しすぎるところもありますが、それでも昔話絵本の文章はふだんの日常会話とは違った「古い日本語の響きを感じられるもの」をおすすめします。
アニメ風の絵本はこう使う
アニメ風絵本はお子さんの「自分読み」に
昔話絵本には再話絵本をさらに読みやすくした作品もたくさんあります。文章はストーリー展開に関係が薄いエピソードは削ぎ落とされ、使われている言葉もほぼ現代語に直されており、絵もアニメのような親しみやすい昔話絵本です。このような絵本はお子さんが5〜7歳くらいになって、お子さん自身が音読するための絵本としておすすめできます。
「親しみやすい絵本」の落とし穴
時おり「アニメ風の簡単な絵本の方が子どもには親しみやすいから」とおっしゃってアニメ風の絵本を読み聞かせる方がいらっしゃいます。それはそれで良いとおもうのですが、お子さんのためにも「親しみやすい絵本」がもつリスクについては理解しておいてあげてください。
「地味な昔話絵本」のメリット
古臭く地味な昔話絵本のもっとも素晴らしいメリットは、昔話特有の絵や文章のおかげで「まるでタイムスリップをしたような感覚」を得られることです。お子さんが生きている現代ではなく、すでに流れ去った悠久の時間の流れのほんの一端を経験することができます。幼少期に昔話絵本を読み聞かせてもらった経験が豊富なママやパパは、昔話絵本を開いたときの「時間に吸い込まれるような感覚」を感じたことがあるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。(私はこの感覚が歴史や古文への知的関心や10数年後の学校の成績に関係しているのではないかと考えています)
「親しみやすい絵本」のリスク
アニメ風の親しみやすい絵本で昔話の読み聞かせを慣れてしまったお子さんは、ほぼ確実に「古臭い昔話絵本」を読むことはありません。子どもは強い刺激を好み、強い刺激に慣れてしまうものです。分かりやすい文章と分かりにくい文章では分かりやすい文章の方がお子さんの脳を刺激するでしょうし、淡く地味な色合いよりも明度も彩度も高いアニメ風の絵の方がお子さんを惹きつけます。
「古臭い昔話絵本」を読んだことがなくても歴史や古文の点数は取れますし、歴史や古い日本語に多少興味が薄くてもほぼ問題なく人生を歩まれると思いますが、2020年の東京オリンピックを皮切りに日本の国際化はますます急速化すると思われ、日本人としてのアイデンティティも大切になるかもしれません。英語子育てには「行事絵本」と「昔話絵本」は欠かせません。
昔話絵本の難易度を活用する
「味わいのある絵本」にもレベルが
「現代語の文章、アニメのような絵」ほど極端ではなく、絵には味わいがあり、文章も古い言葉が残されている昔話絵本の中にも難易度が低めで読みやすい絵本もありますし、言葉は古い言葉がほぼ残されていて難しく、文章も長く挿絵も生々しいレベルの高い昔話絵本も存在します。(詳細は後述します)
昔話を読み聞かせる3つのコツ
できるだけ早く読み聞かせる
昔話デビューのおすすめの時期
昔話はできるだけ早く読み聞かせを始めた方がよろしいです。「できるだけ早く」というのは妊娠中の胎教や0歳児の乳児期です。1歳になる前に1冊は昔話を読み聞かせてあげて、日本語の古来の美しさを体験させてあげてください。この早い時期の経験があると、古き良き昔話絵本を読むべき園児期になっても古臭い絵や文章にもすっと慣れてくれます。
1歳になってからでは遅いかも
1歳になり、手も体も素早く動くようになってからでは昔話絵本はちょっと遅いと思います。ご家庭での読み聞かせ習慣の程度にもよりますが、1歳になってしまったら一旦昔話絵本は諦めて、ふつうの物語絵本を読み聞かせてあげてはいかがでしょうか。昔話絵本はもう少し待って3~4歳くらいになったら昔話絵本デビューをさせてあげることをおすすめします。
古めかしい日本語を練習する
お子さんよりもママとパパが練習を
昔話の名作絵本はママやパパが思っているよりも日本語が難しいかもしれません。せっかくお子さんが昔話の世界に入り込もうとしている時に、ママやパパの読み聞かせがしどろもどろでは元も子もありません。お子さんの想像力を掻き立ててあげられるように、古めかしい日本語の言い回しを練習しておきましょう。この点からも良質な昔話絵本は胎教で読み聞かせるのが本当は理想的です。赤ちゃんがお腹にいれば、ママがどれだけつっかえてしまっても赤ちゃんは喜んでいるはずですから。
成長に合わせてレベルアップ
いもと絵本や松谷絵本は親しみやすい
たくさんの昔話絵本を残している巨匠たちの名前を上げれば、松谷みよ子氏の昔話やいもとようこ氏の絵本は比較的読みやすく親しみやすいです。
瀬田絵本と与田絵本を目標に
たくさんの昔話絵本を残している巨匠たちの名前を上げれば、松谷みよ子氏の昔話やいもとようこ氏の絵本は比較的読みやすく親しみやすいです。原話に忠実で品格というものすら感じるのが与田準一氏の絵本や瀬田貞二作品です。昔話絵本は読みやすい作品から選びながら、最終的には瀬田絵本・与田絵本を目標にするとよろしいのではないでしょうか。
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